ルルド・ヌヴェール巡礼の旅
(2010年5月12日〜5月18日)
岩間 充
成田発約12時間のフライトの後、憧れの都パリに到着。このような書き出しで始まる旅行記は多々ある。しかしである。パリはあくまで移動の通過点。到着早々、ミゲル神父様率いる我々一行は、パリを背にして一路ルルドを目指す。ルルド・・・?洗礼を受ける1年ちょっと前までは、その名前すら知らなかった。巡礼も初めて。そして今、初めて来訪するフランスという異国の地に、同じ目的をもった同志らと足を下ろしている(各教区から総勢80数名)。今まで旅といえば、若い頃からやっていた波乗りやウィンドサーフィンが目的。よって海外旅行の行き先は、お決まりの海。サーフィンの聖地といわれるハワイ、グァム、サイパンでグットな波、風をゲットすることに主眼を置いていた。洗礼後「古い自分は死し、新しくされた」。この意味で、古い旅は終焉し、新しい旅の第一歩が今度の旅となった。本当の意味での聖地へ旅立つことに。
南フランスとスペインの国境にあるルルドとパリ郊外にあるヌヴェール。この2つの町は距離を置いているが、巡礼の旅の意味においては一連である。このルートに身を置くことによって、マリア様の光がベルナデッタを煌々と照らし出すさまを、思い巡らすことができる。
矢継ぎ早に、飛行機・バスを乗りつぎ、やっとルルド到着。初日からあいにく雨。気温も低く、寝不足もあってか意気消沈気味。しかし修道院でのシスターによるあたたかい朝食のもてなしでパワー全開。さっそく、修道院から徒歩で聖地中心へと向かう。一見、ディズニーランドのテーマパークと見紛う様な、整然とした一体感のある町並みと、前方には、空に向かって聳える教会の塔が目に飛び込んでくる。5月のルルドは新緑豊かで、ガブ川の流水の音、小鳥のさえずりが身も心もそっと包含してくれる。どこからともなく、異国の言葉で奏でる聖歌も聞こえる。ゆっくりとその空間に身を置く。これだけでも癒しの恵みを実感できる。
初めての地、初対面の信徒の方々。緊張と感慨、不安と開放。この錯綜した気持は日が経つに連れ解き放たれ、最後は一致というよき形で巡礼の方々の表情に表れてきました。お国柄か、修道院でまさかの赤ワインを頂きながらの、昼食と夕食。適度のアルコールのおかげで緊張がほぐれて、時があっという間に過ぎ、話足りないぐらいでした。未信者の方も何人か参加され、友達にもなりました。私が洗礼を受ける前までルルドを知らずにいた状況より、あなた方は今まさに「呼ばれているのですよ!」。後はパスカルに従い「賭けるだけでよいのですよ!」。
感動した出来事を二つ書きます。一つはマリア様ご出現の洞窟マッサビルでのミサ。ミゲル神父様が司式する、各教区からの司祭による合同ミサ。野外でのミサはもちろん初めてで、更にミサ進行役を仰せ付かり、その模様がインターネット上で世界に配信されると聞かされ、否が応でも気持ちは緊張し高揚する。地元のボランティアの厳重な体制のもと、祭壇にあがる前まで飛び出しそうな心臓の鼓動も、ミサが始まる頃には不思議に穏やかになっていた。もう一つは、ヌヴェールで見た、今にも起き上がるではないかと錯覚しそうな光彩陸離たるベルナデッタの姿・・・・・。胸に熱いものがこみ上げてくる。そして、サン・ジルダール修道院のシスターがベルナデッタを語る時、目に涙を浮かべていた様も印象的であった。
その他、いろいろありました。巡礼の人々が多くて、沐浴できなかった方々。財布を無くされた方(最後、戻りました)。スリに遭われた方(傘)。入国審査で靴まで脱がされた者(わたくしです)。ミゲル神父様と私の二人で、スリの居合わせた超混雑の電車で、3時間立ち通しの荷物の監視。この平坦ではなかった、巡礼の道筋。しかし、洗練されたパリの町並みも、パリジェンヌもルーブル美術館の凱旋門も、この豊かな癒しの恵みに比べれば、灰燼に過ぎないように思われました。スケジュール的にはハードで、ご高齢の方々が多かった今回の旅でしたが、マリア様はそのご加護のもと我々を無事帰国させてくださいました。  岩間 充

ー ルルド巡礼センター −