LORETOロレート(聖なる家の巡礼聖堂)−霊的手引書−
【歴史的まえおき】
「ロレートの『サンタ・カーザ』(聖なる家)は、聖母に捧げられた全ての巡礼聖堂の中で世界的に第一のものであり、キリスト教における聖母マリアの、まことの中心地であります。」(ヨハネ・パウロ二世)
事実、このロレートの巡礼聖堂は、古くからの伝統に従い、さらに現代の歴史的、考古学的研究によっても立証されている、聖母マリアのナザレトの家を保存している。この家は二つの部分からできているが、一つは岩の中に掘られた洞窟で、それは現在に至るまでナザレトで受胎告知の大聖堂(バジリカ)として崇高されている。もう一つは、ちょうどこの洞窟を閉じるように、その正面の三方を囲む石造りの壁でできた一つの部屋から成っている。伝説によると、1291年十字軍が決定的にパレスチナから追放された時、その石造りの壁の部分が、まずイリリア(現在のクロアチアのテルサット)に、それからロレートの土地に(1294年12月10日)、「天使的な方法を通して」運ばれたということである。現在ではナザレトと聖なる家の床下の考古学的発掘(1962〜65年)の結果による資料と、言語学及び平面図法学に基づいた新しい指針によると、聖なる家の石は、エプリオを治めていた貴族アンジェリ家の発想によって、船でロレートまで運ばれたという説がますます確認されてゆく傾向にある。事実、最近になって発見された1294年のある文書によると、エピロの君主ニチェファロ・アンジェリが、ナポリの王ダンジオのカルロ二世の四番目の息子、タラントのフィリッポの許へ、自分の娘イタマルを嫁がせるにあたり、持参品として一連の贈り物を与えたのだが、その中で際立つことは、「神の御母、我らの聖なるおとめの家から持ってこられた聖なる石」があったということが明示されていることである。この聖なる家の壁の中に塗り込められた十字軍の赤い布製の五つの十字架が発見されたが、おそらく中世の時代に聖地や遺物を保護していた軍隊の騎士たちのものではないかと思われる。また、ダチョウの卵の破片の化石も発見されたが、それを直ちにパレスチナのことを思わせ、ご託身の秘儀の象徴との関連を考えさせる。さらにサンタ・カーザが、その構造および発見された地域に見出すことができない石の材質が用いられていることをみても、イタリアのマルケ地方の文化と建築用法とは関係のない手法で築かれているのが分かる。また、ナザレトの洞窟とサンタ・カーザ正面部との対照が、これらの共存性と隣接関係に光を当てている。石の上になされた細工方法についての最近の研究は、伝統の確証を示す大きな重要性を持っている。それはイエズスの時代にガリレアで普及されていたナバディの慣習に従ったものだということである。また、石の上に刻み込まれた数多くの掻き絵も非常に興味深い結果をもたらす。専門家によると、それらはユダヤーキリスト教的な根源を明白に示すもので、ナザレトで発見されたものよく似通っている。サンタ・カーザの元来の中核は、三方の壁によってのみ構成される。なぜなら祭壇が置かれた東側は、洞窟に向かって開いていたからである。本来の三方の壁は−家の床の部分はなく、古い道の上に置かれたもの−地面から3メートルの高さしかない。サンタ・カーザの壁を包む大理石の上張りは、ジュリオ二世によって所望され、イタリア・ルネッサンス時代の名高い芸術家ブラマンテのデザインに基づいて実現した(1507年頃)リバノンのシトロンの木で作られた幼子イエズスを抱いた聖母の聖像は、1921年の火事によって失われた14世紀のものと取って代わった。何百万という巡礼者に好まれる目的地となり、世界中に名を馳せ、敏速に広がっていったこの巡礼聖堂を飾るために、何世紀にも渡って次々と偉大な芸術家たちが続いた。巡礼者にとってこの聖なる家は、神の子の託身の秘儀と救いの告知の神秘とに結びついた、神学的および霊的に深いメッセージを黙想するための機会と招きとなるだろう。
【託身の秘儀の巡礼聖堂】
歴代の教皇たちは、この巡礼聖堂に対して特別な配慮を向けてこられた。なぜならば、ここで『神の神秘が成就されたからです』。彼らはまず、マリアへの天使のお告げをもって果たされた託身の神秘に言及している。「ロレートのサンタ・カーザは、単なる抽象的な真理ではなく、みことばの託身という一つの出来事、一つの秘儀のイコンであります。この敬うべき小さな聖所に入る時、私たちは常に深い感動と共に、祭壇の上に掲げられた"Hic Verbum caro factum est"(ここでみことばは肉となられた)、という言葉を読みます」。
(ロレートの七百年祭に際する教皇ヨハネ・パウロ二世の手紙)
ヨハネ二十三世は、1962年10月4日のロレートへの巡礼の際に、次のように述べられた。「みことばの託身は、世界中に散らばった信心深い霊魂たちから唱えられる、アンジェルス・ドミニ(お告げの祈り)の時間の祈りのモチーフであります。私たちにとって非常に親しいこの出来事についての観想は、託身と贖罪の目的である。天と地との合致という事実について黙想するように、特にこの場所から人々を招くために、飛躍の精神を受け取るようにと望むのです」。
「お告げとご託身の神秘について黙想しながら、この聖なる家でアンジェルスの祈りを唱えることは、まことに意義深く、心に触れるものがあります。我々はアンジェルスの祈りを、まさにロレートの祈りと考えることができるでしょう」。(ヨハネ・パウロ二世の手紙)
【お告げの祈り】(アンジェルス)
*主のみ使いの告げありければ、マリアは聖霊によりて懐胎し給えり。天使祝詞  一回
*われは主のつかいめなり、仰せのごとくわれになれかし。天使祝詞  一回
*しかしてみ言葉は人となり給い、われらのうちに住み給えり。天使祝詞  一回
*天主の聖母われらのために祈り給え。キリストの御約束にわれらを適わしめ給え。
 祈願 主よ、われら天使の告げをもって、御子キリストの御託身を知りたれば、願わく
 はその御苦難と十字架とによりて、ついに御復活の栄えに達するを得んため、われらの心に聖寵を注ぎ給え。われらの主キリストによりて願い奉る。アーメン。
*栄唱   三回
【聖霊の巡礼聖堂】
マリアのご胎内におけるみことばの託身という神秘は、聖霊の働きを通して成就された。天使はマリアに言った。「聖霊があなたの上に臨み、いと高き御者の力があなたを覆うでしょう」(ルカ 1:35)。
「聖霊がマリアの胎内において救い主の人間性に命を与えることによって、その最も崇高な『生かす』というわざを果たされた瞬間とその場所を思い出させるあのロレートの聖所以上に、より効果的に聖霊の役割について話すことが出来る場所が、いったいどこにあるでしょうか?」。(ヨハネ・パウロ二世)
ゆえにこの聖なる家は、他のどの事実にもまさって、聖霊の巡礼聖堂である。キリスト者はここで、キリストの体の一部に組み込まれ、その救いの恩恵に参加することを可能にしてくれた自己の洗礼への根本的な忠実を願って、その七つの賜物を神なる聖霊に祈り求める必要を感じるのである。
【聖霊の御降臨を望む祈り】
聖霊来たり給え、天より御光の輝きをはなち給え。貧しき者の父、恵みの与え主、心の光にます御者来たり給え。いと優れたる慰め主、霊魂の甘美なる友、心のなごやかなる楽しみ。つかれたる時の憩い、暑き時の涼しさ、憂うる時の慰め。いたって幸いなる光よ、主を信ずる者の心に来たり充ち給え。
主の御助けあるにあらざれば人には罪ならざる所なからん。こいねがわくは汚れたるを清め、乾けるをうるおし、傷つけられたるを癒し給え。固きを柔らげ、冷えたるを暖め、曲れるを直くし給え。主を頼む信者に神聖なる七つの賜物を施し給え。善徳の勲を積み、救霊の彼岸にいたり、永遠に喜ぶを得しめ給え。アーメン。
【汚れなきおん宿りの巡礼聖堂】
裏づけに基づいた伝統によれば、聖マリアは、ナザレトのご自身の家でお生まれになったと言われている。
ジュリオ二世(1507年)に始まって歴代の教皇は、ロレートの聖なる家を「おとめマリアが、そこで宿され、育てられ、そして天使のお告げを受けたところである」、と考えてきた。
この質素な壁の内部で、人が原罪を犯したすぐ後で神がなさった約束、「お前と女、おまえの子孫と女の子孫の間に、私は敵対を置く。彼女はお前の頭をふみ砕き、おまえは彼女のかかとをかむであろう」(創世記3:15)、という神の約束が果たされた。
その息子において悪に勝つ女とは、マリアのことである。神聖なる母性ゆえに、罪の汚れなくしてその母親の胎内に宿された聖母は、神的恩恵の勝利を通して、毎日罪と戦う各キリスト信者にとっての模範と霊的力の源泉である。
「いまだに『めでたし、聖寵満ち充ちたマリアよ』、という挨拶の言葉が響くこのロレートの聖なる家は、お恵みについて黙想するだけではなく、秘跡を仲介としてそれを受け、なくした恩恵を再びそこで見出すことができる特典的な場所でもあります」。(ヨハネ・パウロ二世)
【汚れなきおん宿りのマリアへの祈り】
ああ汚れなきおとめマリアよ、私たちは、あなたが罪の汚れなくして宿され、世界に喜びをもたらすためにお生まれになった場所である、あなたの聖なる家に参ります。
その聖なる壁の前に置かれ、あなたの両親ヨアキムとアンナに託され、神の愛の接吻を受けながら成長された、小さく幼いあなたを見つめます。キリスト教時代としての三千年期に入った今、あなたの子供である私たちは、キリストの輝かしい光を世界にもたらされた救いのあけぼのである、あなたを眺めます。
あなたと教会に一致し、あなたの聖なる家の中で果たされた出来事に照らされて、私たちは、この時期を通してあなたの恩恵の歩みをたどり、あなたと共に生まれ、共に育ち、共にイエズスへの完全な私たちの奉献の『はい』を繰り返すことによって、この新しいキリストの三千年期のあけぼのに際し、あなたと共に神なる御子をお迎えしたいと思います。生涯のあらゆる瞬間においてあなたが満たされておられた聖霊によって、どうか人類が刷新されますように。
【イエズスの隠れたご生活の巡礼聖堂】
ヨハネ二十三世は、ロレートへの巡礼の際のお説教の中で、「託身の神秘とは、マリアとヨゼフと共にイエズスがナザレトで過ごされた30年間の生活を奉献するものであります。人が、受肉によって天国の共通相続人としての尊さへと高められ、天の故郷への歩みの開始を新しく始めるように、その隠れた生活を通して、仕事とその高貴性の聖なる義務を讃えながら、家庭の偉大さと尊厳の賛美の歌を天に上げるのです」、と仰せられた。ナザレトの家におけるイエズス・キリストの隠れたご生活の模範は、祈りと謙遜の生活の優先的重要性へと、キリスト信者を招く。ここで人は、観想と潜心の精神が与えられるように嘆願するために、イエズスご自身が教えられた祈りを繰り返すことは急を要することであるということを、新鮮な感動をもって感じるのである。
【主の祈り:主祷文】
天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来たらんことを、御旨の天に行わるるごとく、地にも行われんことを、われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦すごとく、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。
【家庭の巡礼聖堂】
1962年10月4日、ヨハネ二十三世教皇は言われた。
「さあこれが、ナザレトの教えです。すなわち熱心に燃える心、寛大で善意の意志から芽生えた家庭の完徳、祝福された愛、聖なる家庭です」と。
このテーマは、1979年にロレートへの巡礼者となられたヨハネ・パウロ二世によって、さらに広く発展した。なかでも教皇様は、「聖家族の家!これは神の御母がご自身の母性をもってその光を輝かされた最初の神殿、最初の教会です!それは偉大な託身の秘儀、その御子の神秘から放たれるマリアの光によって照らされたのです。」、ということを特に言われたのである。
『ロレートのナザレトの家』を見ながらヨハネ・パウロ二世は、人間の家族の子供たちがこの世に生まれる時に、どうかその皆の頭の上に屋根があるように、一つの家を所有することができるように、ということを強調された。ナザレトの聖家族は、キリスト信者の全ての家族の模範と保護者である。それゆえに信徒は、彼らの家族とその家の守護者として、ロレートの聖母マリアにより頼むのである。
【聖家族への奉献の祈り】
キリスト信者の家族の模範、ナザレトの聖家族よ、私たちは、喜びの心をもってあなたを讃え、崇敬いたします。家族が、そこで両親、子供たち、お年寄り、若者たちが、愛徳の実行の競争をするための神の現存の聖所、また新しい命のゆりかごとなりますように、私たち自身をあなたに委ねます。ロレートの丘から信仰と愛の光を世界に放つナザレトの聖家族よ、私たちの家族に護り、福音の至福の道へと私たちをお導き下さい。アーメン。
【聖家族への祈り】
ああイエズス、マリア、ヨゼフ様、あなた方の質素な家の中に霊的に入ることができますように、教えて下さい。
あなた方の徳の学校で育つということは何を意味するかということを、私たちに理解させて下さい。
真剣に祈り、働くこと、内的沈黙を求めること、そして神の御旨への素直な従順の実践について教えて下さい。父と子と聖霊への礼拝のうちに行われるあなた方の賛美の祈りに、どうか私たちを一致させて下さい。アーメン。
【聖化される仕事の巡礼聖堂】
さて、聖なる家のもう一つの教えとして、ヨハネ二十三世は、ロレートへの巡礼の際に次のようにも言われた。
「イエズスの隠れたご生活について、私たちは少ししか知りません。しかし、あの30年間に主がなさった仕事のことについて知っているだけで十分です。20世紀に渡ってキリスト教は、イエズスのお手本に基づいて人間の尊厳についての自覚を持ち上げることによって、自己の全体的存在意義を認めるように助けてきました。
ナザレトの家での仕事は、神の御子自身、またマリアとヨゼフによって実践された贖罪と聖化のしるしとなります。そこで労働者が聖家族を眺める時、彼は神の創造のわざとその歴史を続けることへ向かう、世界における自分自身の使命を理解するでしょう。」
【労働者聖ヨゼフへの祈り】
ああ聖ヨゼフ、イエズスの守護者、マリアの最も貞潔なる花婿よ、あなたは、その手仕事をもって聖家族を支えることにより、義務の完全な遂行の生涯を送られました。
どうか信頼をもってあなたに向かう人を慰め、守って下さい。
あなたは彼らの願い、欠乏、希望をご存知です。
彼らはあなたのうちに、自分を理解し、守ってくれる人を見つけることを知っていますので、あなたのもとに馳せつけるのです。
あなたも試練、困難、疲労などを体験なさいました。
しかし物質的な生活の心配のさなかにありながらも、あなたの心は最も深い平和に満ち、あなたに託された神の御子と、優しいその御母マリアとの親密な一致ゆえに、言い尽くしがたい喜びに踊るのでした。
あなたから守られる者は、仕事において孤独ではないことを理解し、自分のそばに主イエズスを発見し、恩恵のうちに主を迎え入れ、あなたがなさったように忠実に主を守ることができますように。
それぞれの家庭、またキリスト者が働く各仕事場、各作業所のあらゆる場所においては、すべてが愛徳、忍耐、正義、仕事をよく果たすことの探求によって聖化され、天的寵愛の賜物が豊かに下りますように。                (ヨハネ二十三世)
【フィアット】の家の巡礼聖堂
「みことば」は、マリアの胎内において自ら人となることによって、父なる神に言われた。「ご覧下さい、私は来ました、ああ神よ、あなたの御旨を行なうために」(ヘブライ10:7)と。そしてマリアは、その神的母性について告げた天の使いの言葉に対して、「フィアット!」と答えた。「わたくしは主のはしためです。お言葉通り、この身になりますように」(ルカ1:38)。これは、人々を救った二つの「ハイ」である!ヨゼフも夢を見た後、勇気をもってハイと言った。「ヨゼフは眠りから覚めると、主の使いに命じられたとおり、花嫁マリアを自分の所に迎え入れた」(マタイ1:24)。このようにして、この聖なる家は、毎日クリスチャンすべてにとって、祈りと奉献の特別の場所となった。特にマリアの模範に従って、司祭職または修道誓願によって自身のフィアットを誓った人たちは、ここで特別の熱心をもってそれを新たにすることができる。「人はロレートで、特に従順と、自己の生活の中に喜びをもって神を受け入れるという、マリアの信仰に影響されるかのようです。それは、神のご計画に対する完全、かつ寛大な『ハイ』であります」。(ヨハネ・パウロ二世)
最後にこの聖なる家は、司祭職または修道生活において、自分に従うようにというイエズスの招きを受け入れることに心の用意ができた、あの寛大な若者たちにとっての祈りの場所として、大きな特典に浴する場所であるということを付け加えたいと思う。
【召命のための祈り】
ああナザレトのおとめマリア、若くしてあなたが仰せられた「フィアット」はあなたの存在を刻印し、あなたの生涯そのものと共に偉大なものとなりました。ああイエズスの御母よ、多くの世代とその教育者たちは、自由で喜ばしいあなたの「ハイ」と実り多いあなたの信仰の中に、神のみことばを受け入れるための照らしと、御旨を果たすための力を見出しました。ああ人生の師よ、どうか若者たちに彼らの存在に意味を与える「ハイ」を述べることを教え、神が彼ら各々の心の中に隠された「名前」を発見させてあげて下さい。使徒の元后マリアよ、若者を愛し、彼らを育てることを知り、自由と幸福を与えてくれる真理との出会いへと、彼らを導くことのできる賢明な教育者を、私たちに与えて下さい。アーメン。(ヨハネ・パウロ二世)召命の母マリアよ、われらのために祈り給え
【和解の巡礼聖堂】
聖なる家は、時折「新しい契約の箱舟」とも呼ばれる。旧約聖書は一つの雲のしるしのうちに、民の真ん中におられる神の存在を認めていたが、この聖なる家は、人となられた神ご自身を迎え入れた。
イエズスはご自身の死と復活によって、神と人類のあいだに新しく、かつ永遠の契約を制定された。主はご自身の血の価を払うことによって、御父と人類を和解させられた。
何世紀にも渡ってこの聖なる家の巡礼聖堂にはあらゆる場所から無数の巡礼者たちが、和解の秘蹟によって神と和解するためにやって来る。現在においても、ここに詰めかける懺悔者たちの数は、非常に大きなものである。ロレートの聖母の執り成しによって良心の内密において行われる改心の事実は、数え切れないほどである!この『霊のクリニック』では、各クリスチャンが、自分自身の罪について神に赦しを願う必要があることを、生き生きと感じるのである。
【痛悔の祈り】
ああ天主、われ、主の限りなく嫌い給う罪をもって、限りなく愛すべき御父に背きしを深く悔やみ奉る。御子イエズス・キリストの流し給える御血の功徳によりて、わが罪を赦し給え。聖寵の助けをもって今より心を改め、再び罪を犯して、御心に背くことあるまじと決心し奉る。アーメン。
【病人の家の巡礼聖堂】
伝統的聖画は度々、聖なる家の中で苦しみ、臨終の間際にある聖ヨゼフの姿を描いている。この家の敬虔な壁は、多くの苦悩、病気、死を知った。
ここにはあらゆる所から病人の巡礼者たち、特にウニタルシ(UNITALSI;ルルドなどの巡礼地に、看護婦、担架運びの男性、医者などのボランティア、司祭、一般人などを一緒にした病人列車の巡礼団を組織するアソシエーションで、イタリア語の頭文字の名称)や、同様な趣旨の連盟などの組織に導かれた巡礼団の人々がやってくる。彼らは苦しみの中で、聖母に慰めとその緩和を願うために来る。
「ラウレターナの連祷の祈り(聖マリアの連祷)の中でまさしく『病人の回復』および『憂き人の慰め』として祈願されるお方の家でないとしたら、いったい他のどこにこれ以上良く彼らが迎え入れられる場所があるでしょうか?」(ヨハネ・パウロ二世)
時々、聖母の微笑は、ここで奇跡的癒しをも行われる。さらに度々、その愛撫が人々の心の中にくだって、苦しみの困難な道行きにおける信頼と勇気を注いでくれるのである。
【病人の祈り】
主イエズスよ、病気が私の人生の扉を叩きました。それは厳しい体験、受け入れがたい現実です。でも、まさにこの病気ゆえに、あなたに感謝します。それは、人間の存在のもろさと心もとなさに、私の手を触れさせてくれました。いま私は、自分が何者であるか、またすべてを異なった目で眺めます。私が所有しているものは私に属するものではなく、あなたからの賜物です。いま私は、他の人に依存すること、あらゆることにおいて他の人の助けを必要とし、私ひとりでは何もすることができない、ということが何を意味するのかを発見しました。私は孤独と不安を体験しましたが、同時に多くの人の友情と愛情も受けました。主よ!たとえ私にとって難しいことではあっても、『あなたの御旨が行われますように!』と繰り返します。私の苦しみをあなたに捧げ、それをあなたの苦しみに一致させます。私を看護し、私と共に苦しむ人たちを祝福して下さい。
ロレートのおとめ、聖母マリアよ、私はあなたにより頼みます。あなたの御子のみもとで、どうか私のためにお執り成し下さい。アーメン。
【移転する家の巡礼聖堂】
サンタ・カーザの移転を描く古い絵画は、上部の雲の上で幼い御子を抱いた聖母に付き添われて、船の上、または海の上にある聖なる家を描いている。それは、マリアに導かれるナザレトの家である。これは、世界の道を旅する人間のシンボルである。ロレートのおとめはまた、飛行機で旅する旅行者の守護者でもある。なぜなら、1920年にベネディクト十五世が、そのように宣言されたからである。ゆえに世界中の飛行士たちは、彼らの天の守護者として、ロレートの聖母に祈願する。さらにまたロレートの御母は、追放者と移民生活者たちからも崇敬される。このナザレトの家がロレートに移動されたように、彼らも住む国を変えることを余儀なくされたからである。
最後に、この移転してゆく家は、おとめマリアに付き添われて天の父の家へと向かってキリストと出会うために歩む、人類家族の大きなシンボルでもある。
【飛行機の旅の祈り】
その栄光を空が語り、『風の翼に乗って進む』我らの主なる神よ、私たちは、あなたのみわざの全てについて あなたを祝福し、賛美します。あなたはその限りない英知をもって、美しく偉大なことを実現する役割を、私たちにんげんに委ねられました。ロレートのおとめマリアの執り成しによって 私たちがあなたに向ける祈りに、どうか御耳を傾けて下さい。天空を切って進む飛行機が、はるか遠い宇宙を越えてあなたの御名を広め、より速く人々の活動を具体化するために役立ちますように。
旅客があらゆる危険を超越し、彼らを待つ目的地に着けますように、あなたの祝福をもってパイロット、技師、助手などの人たちが、賢明に慎重をきすことができますように、お守り下さい。われらの主キリストによって。アーメン。(これは1979年9月8日、教皇ヨハネ・パウロ二世がロレートに巡礼に来られた時に作成され、唱えられた祈りである)。
【リタニア・ラウレターナ】『ロレートの聖母の連祷』
主あわれみ給え。
キリストあわれみ給え。
主あわれみ給え。
聖マリア、われらのために祈り給え。
聖なる神の御母、われらのために祈り給え。
童貞のうちにて いとも聖なるおとめ、われらのために祈り給え。
キリストの御母、われらのために祈り給え。
神の恩恵の御母、われらのために祈り給え。
いと潔き御母、われらのために祈り給え。
いとみさお正しき御母、われらのために祈り給え。
終生童貞なる御母、われらのために祈り給え。
汚れなき御母、われらのために祈り給え。
愛すべき御母、われらのために祈り給え。
感ずべき御母、われらのために祈り給え。
善き勧めをたもう御母、われらのために祈り給え。
創造主の御母、われらのために祈り給え。
救世主の御母、われらのために祈り給え。
いとも賢明なるおとめ、われらのために祈り給え。
敬うべきおとめ、われらのために祈り給え。
誉むべきおとめ、われらのために祈り給え。
力あるおとめ、われらのために祈り給え。
情け深きおとめ、われらのために祈り給え。
忠実なるおとめ、われらのために祈り給え。
ロレートのおとめ、われらのために祈り給え。
完徳のかがみ、われらのために祈り給え。
上智の座、われらのために祈り給え。
われらの喜びの源、われらのために祈り給え。
永遠なる栄光の聖櫃、われらのために祈り給え。
神に捧げられた住まい、われらのために祈り給え。
くすしきバラの花、われらのために祈り給え。
ダヴィドの聖なる都の塔、われらのために祈り給え。
不落の城壁、われらのために祈り給え。
神の現存の聖所、われらのために祈り給え。
契約のひつ、われらのために祈り給え。
天の門、われらのために祈り給え。
暁の星、われらのために祈り給え。
病人の回復、われらのために祈り給え。
罪人のよりどころ、われらのために祈り給え。
憂き人の慰め、われらのために祈り給え。
キリスト信者の助け、われらのために祈り給え。
天使の元后、われらのために祈り給え。
太祖の元后、われらのために祈り給え。
預言者の元后、われらのために祈り給え。
使徒の元后、われらのために祈り給え。
殉教者の元后、われらのために祈り給え。
証聖者の元后、われらのために祈り給え。
童貞者の元后、われらのために祈り給え。
諸聖人の元后、われらのために祈り給え。
原罪なくして宿りし元后、われらのために祈り給え。
被昇天の元后、われらのために祈り給え。
いと尊きロザリオの元后、われらのために祈り給え。
家庭の元后、われらのために祈り給え。
平和の元后、われらのために祈り給え。
世の罪を除き給う神の子羊 主われらを赦し給え。
世の罪を除き給う神の子羊 主われらの祈りを聴き容れ給え。
世の罪を除き給う神の子羊 われらをあわれみ給え。
天主の御母 われらのために祈り給え。
キリストの御約束に われらを適わしめ給え。
「祈願」
ああ主よ、御身の御子は、そのご生涯とご死去、ご復活により 永遠の救いの富を我らにもたらし給えり。願わくは、おとめマリアの聖なるロザリオの祈りにより 玄義を黙想した我らが、その秘義に倣い、約束されしところに達するを得しめ給え。我らの主キリストによりて。アーメン。
【ロレートの聖なる家の世界的信心会について】
由来:サンタ・カーザの世界的信心会は、1883年ロレートの司教トマーゾ・ガルッチ師によって創設され、最初の時期はカプチン会司祭マラガのペトロ神父によって指導された。                
目的:世界的信心会が創設された動機は、
→特に託身の秘儀、聖家族、聖母マリア、そしてここで『神の神秘が成就された』聖なる家への特別な注目を通して、ロレートのマリアへの崇敬を普及させること。
→寄せられる献金などによって、ロレートの大聖堂の維持、装飾、そこで行われる様々な使徒的活動を助けること。
→個人的に、またはグループで訪れる健康な、または病気の巡礼者たちを迎えるため。
 会員になるための登録は、サンタ・カーザの崇敬を広め、その大聖堂が目的とする使徒職の実践に協力し、登録する人々に与えられる霊的恩恵を得たいと望む人たち全てに対して開かれている。
霊的恩典:→登録日とロレートの聖母の祝日(12月10日)に全免償を得ることができる。そのための条件は、ゆるしの秘跡と聖体拝領を受け、使徒信経、主の祈り、天使祝詞を唱え、教皇の意向のために祈ること。
→ロレートの大聖堂で毎日特別に、生存者または死者を問わず、登録者のために捧げられるミサ聖祭による恩典への参加。(メッセ・ペルトゥエ)
→カプチン会全体の霊的恩典と、祈りの功徳への参加。
登録規制:→本部に手紙などで依頼すること。生存者、死者、個人、家族として登録できる。登録証明書が送付される。
→霊的恩典への参与の事実が、永久的なものとなる。
→登録のための条件としては、キリスト信者として相応しく生きる義務以外には、特別なことを要求されることはない。
→しかし、聖なる家の中で成就されたご託身の秘儀を思い出させる「お告げの祈り」を一日に三回唱えることが勧められている。
→登録のための費用は、個人のためにはミサ一回分の謝礼、家族のためにはミサ二回分の謝礼に相当する献金が定められている。
 登録は、聖母マリアを崇敬し、ナザレトの聖家族のご保護を受けたいと望む全ての人とその家族に開かれている。
雑誌『サンタ・カーザのメッセージ』について:→ロレートの世界的信心会は、イタリア語では『サンタ・カーザのメッセージ』、英語では『ロレート』というタイトルで、月刊誌を発行している。それは「絶えざるミサ」への登録者、ロレートの聖母の崇敬者たち、友人たちをサンタ・カーザと結びつけるために欠かせないものとなっている。この雑誌を講読したい方は「Congregazione Universale Della Santa Casa」宛、郵便講座番号(c.c.p.311605)に購読料を払い込む。
聖家族信心会または友の会の推進会:→世界的信心会の目的推進のためにより具体的に、熱心に協力したいと望まれる方は、サンタ・カーザの推進者たちを結ぶ「聖家族の友」グループに属したいという旨をお知らせ下さい。そのような方々には、このグループへの登録証明書と共に、特別な役割が与えられます。
【ロレートについてのヨハネ・パウロ二世のお言葉】
「数多くの聖母マリアの巡礼聖堂の中でも、今日私はイタリア内で1500以上あるマリアに捧げられた巡礼聖堂の中で最も有名な、あのロレートの巡礼聖堂のことを思い出したいと思います。ロレートの聖母への一般的信心は、アンコーナの町のあの『栄光の丘』の上にあるナザレトの小さな家の『移転』に関する出来事の伝説と同じくらい古いものです(…)。すでに700年もの前からロレートの巡礼聖堂が信徒たちに及ぼす特殊な魅力とは、特に病人、貧者、謙遜な人、疎外された人などにとって、まさに人間の救いのための神の託身という、その唯一不朽なメッセージから生まれるものでした!ロレートで人々は、神のみことば、キリストの誕生について黙想し、私たちのため、私たちと共に過ごされた謙遜で隠れた地上での主のご生活を再発見します。ご降誕と聖家族の神秘的な現実は、ロレートにおいては、ある意味で感知できるものとなります。それは個人的、感動的、変容的な体験をさせてくれます。ここで受肉されたみことばが何年ものあいだ生活されたこの質素な家について考える時、まことに神は、人間をあるがままに愛して下さり、人に招き、人につき従い、照らし、赦し、救って下さるのだということを、巡礼者に納得させます。
事実、ロレートは世界中から来る無数の群集が、毎日和解の秘跡と聖体の秘跡に参加し、多くの人々が不信仰から信仰へ、罪から恩恵の状態へ、生ぬるく表面的な信者生活から霊的熱心と使徒的あかしの生活へと改心するのです。ロレートは霊魂にとって一つの平和な休息、神との特別な出会いの場です。それはまた、真理と自分自身の人生の意味を探す者にとっての避難所でもあります。ロレートは、神の愛、各人間の尊厳、家庭の聖性、労働と沈黙の価値、祈りの必要性、全ての兄弟に対する愛徳の命令を宣言する、ご託身の巡礼聖堂です!私たちの聖なる母マリアに信頼して、そのメッセージに耳を傾けましょう!」
(1987年12月8日、ヴァチカン広場にて;正午のアンジェルスの祈りのときに教皇ヨハネ・パウロ二世が述べられたお言葉)
「絶えざるミサ」メッセ・ペルペトゥエに登録なさりたい方のため
ロレートの世界的信心会:
Congregazione Universale Della Santa Casa
60025  LORETO (AN) ITALY
TEL:071-970.104 FAX:071-976837
c.c.p. 311605 (郵便口座番号)
以上、Fr. ジュゼッペ・サンタレッリ師のテキストと編集による